備前長船日本刀傳習所

備前長船日本刀傳習所はリアル刀鍛冶の里で、多くの刀匠さんたちが日本刀作りをしておられます。某漫画の刀鍛冶みたいにひょっとこのお面は被っていませんよ。当たり前やろ(笑)
ここでは生の作業風景を見学することが出来ます。

展示場とありますが、やはり本当の刀鍛冶工房なので、ちょっと入りづらい感じ。
外にいた方に「見学してもいいですか」と聞くと、親切に中へ案内していただけました。

中はこんな感じで、観光客向けの案内だけでなく、実際に日本刀の修理を依頼しているお客とのマジトークが行われていました。
「よくも折ったな俺の刀を、よくもよくもォオ!」
まずは基本的な日本刀の製作過程を教えてもらいました。

左に置いてある黒い塊が日本刀の原材料となる猩々緋鉱石、ではなく「玉鋼」です。
ここではたたら製鉄による自家製玉鋼を作っており、備前長船の大きな特徴とのこと。
たたら製鉄とは日本独自の製鉄技術。採取した砂鉄を炭で熱し、不純物を分離させ良質な鋼「玉鋼」を生成します。これが日本刀の元となります。
現在主流の西洋の近代製鉄は鉄鉱石を使います。それを超高温(2000℃くらい)で熱して液体にするので、不純物も混じったままです。
たたら製鉄の方が手間もかかり取れる鋼も少なくなりますが、純度の高い鉄を作ることが出来ます。特に重要なのが、砂鉄で作った玉鋼は、熱すると叩いて伸びる性質があります。
① 玉鋼を熱してバラバラの欠片にし、それを選って集めて固めたものが、写真の一番上の状態です。
② それを熱して叩いて平たく伸ばし、ある程度の長さになったら、真ん中に折り目を入れて折り返し2枚に重ねます。上から2つめです。
驚いたのが、この折り返す作業を15~20回も行うそうです。こうすることで3万を超える層が出来、粘り強い鉄が出来るとのこと。この層は完成した刀にも現れ「地鉄」と呼ばれます。鑑賞ポイントの一つです。
これを細長く伸ばしたら日本刀になるのかと思ったら、そんなイージーなものではありませんでした。
②の作業で行う折り返し鍛錬で作る鉄を、もう一つ別に作ります。炭素量を調節し、炭素量が少ない心鉄と炭素量が多い皮鉄の2種類を作ります。めっちゃ大変やん!
③ 皮鉄をU字にし、その中に心鉄を入れてドッキングさせます。何故、こんなに手間のかかることをするのでしょうか?
日本刀はもちろん切れ味が大切です。しかし、切れ味を良くするために硬くすると、折れやすくなります。逆に耐久性を良くするために柔らかくすると、切れ味が悪くなります。この矛盾の解決方法が、2種類の鉄の融合です。
柔らかい心鉄を硬い皮鉄で包み込むことで、「折れず、曲がらず、よく切れる」相反する性質を持たすことが可能になるのです。
④ ③を細く伸ばして刀身を作ります。刀身に特殊な土を塗って加熱し水で急激に冷やします。この冷却時の加減によって、刀身が膨張し日本刀独特の反りと波紋が生み出されます。
刀に命を吹き込む瞬間で、加減を間違えると、硬度が弱いナマクラ刀になってしまいます。最悪、割れたり曲がり過ぎたりすることもあり、そうなると作り直しです。
刀身の形を整え研磨し、最後に刀匠の銘を刻めば完成です。
マジで驚きばっかりやわ。日本刀の反りって鍛錬で曲げるものやと思っていたら、温度変化によって曲がるとは…。めっちゃ化学的やな。日本刀が鉄の芸術品と言われているのも納得。

包丁も日本刀と同じく折り返し鍛錬で作っていて、100年は使い続けられるとのこと。
次は工房の方も案内してもらいました。

鋼を熱する炉で「火炉(ほど)」と言います。日本刀の鍛造には1200℃~1300℃の高温を必要とする為、松の木が炭化して出来た「松炭」を使っているそうです。

火炉の逆側には、鋼を叩く機械ハンマーがあります。鋼を火炉で熱し、すぐに後ろにあるハンマーで叩くという動きを何度も繰り返します。
今は機械と手作業を組み合わせて鍛錬を行っているとのこと。
この日は、鍛錬は行っておらず、刀身をやすりで研ぐ作業をしておりました。
若い職人さんが多くおられ、出身地も様々で刀鍛冶になるためにここに弟子入りしたそうです。夢をかなえるため、目標を持って行動する。筆者も見習わなあかんわ~。
次は実際に日本刀を見に行きます。数々の備前長船の名刀が展示されている、備前長船刀剣博物館へ。
