近鉄&JR伊勢市駅からは伊勢神宮外宮に向かって参道が続いており、観光客で賑わっている。
対して駅の反対側は住宅地になっており、スーパーやドラッグストアなどがある地元の人の町といった雰囲気。
実は駅の反対側からそう遠くない場所にも、素晴らしい歴史観光スポットがあるのだ。
伊勢河崎は勢田川沿いに妻入りの町屋や蔵が立ち並び、江戸時代の様な町並みが残されている。
江戸時代からお伊勢参りブームが起こり、多くの観光客が伊勢にやってきた。伊勢は一大消費地となり、河崎は日本中から集まってくる物資の集散地として空前の発展を遂げた。
今回は伊勢の台所と称された湊町、伊勢河崎を巡ってみた。
伊勢河崎の特徴
- 切妻屋根と鬼瓦の伝統家屋が立ち並ぶ町並み
- 伊勢市で最多の登録有形文化財の建物群
- 全国初!伊勢が生み出した日本最古の○○。山田羽書とは?
河崎のまちなみ散歩地図
星出館
伊勢市駅北口から住宅地を北へ進み、10分ほど歩くと突如として重厚な雰囲気の旅館が現れた。
1926年(昭和元年)に創業した旅館、星出館。
二見浦旅館街や駅の南口にある山田館を始め、伊勢には星出館の様な大正昭和の重厚な雰囲気を持った旅館が残されている。
明治に鉄道が開通し伊勢神宮の参拝客が桁違いに増加したことで、多くの旅館が造られた。
しかし戦争による空襲で、伊勢市の古い旅館の数は少なくなっていった。星出館はその中の貴重な旅館の一つ。
ただ筆者は宿泊にはあまりお金をかけたくないので、ネカフェ(快活クラブ)に泊まった(笑)。貧乏性の筆者は高級感がある旅館では緊張して寝付けないのだ。
伊勢河崎の町並み
星出館の横の細道に入り奥へ進むと、徐々に古い建物が多くなってくる。
現代的な雰囲気から昔ながらの雰囲気に切り替わっていく感じがワクワクしてくる。
時空のゆがみを越え、ほぼ完全に江戸明治の世界にタイムリープした。
正面のT字路が伊勢河崎のメインストリート、河崎本通り。
黒板張りの外壁、2階建て、切妻屋根の建物は伊勢の特徴。
切妻屋根とは正面から見たとき、ヘの字型になっている屋根のこと。
切妻屋根は北陸などの雪国に多い形式で、屋根に積もった雪が横に落ちるようになっている。
しかし豪雪地帯ではない伊勢で切妻屋根が多いのは、伊勢ならではの理由があった。
その理由はこの伊勢神宮にある。伊勢神宮の社殿は見ての通り、正面から屋根の面が見える平入り屋根になっている。
伊勢神宮への信心が篤い伊勢の人にとって、伊勢神宮と同じでは畏れ多いということで切妻屋根の建物が多くなったと言われている。
河崎の面白いところが、町並みは立派な切妻屋根を持つ町屋が立ち並んでいるが、お店自体は江戸時代からの老舗というよりは、町の商店街のようなラインナップになっている。
進学スクール兼カフェ。2017年に出来たリノベ系カフェ。ハヤシライスが絶品らしい。
伊勢で古い町並みが魅力と言えば内宮のおはらい町だが、そのコンセプトは真逆になっている。
おはらい町は伊勢名物の食べ物屋やお土産物屋が並んでおり、観光に特化した町。
それに対して河崎は地元の人が普段使いしやすい店やお洒落な店が多くあり、伝統と生活空間の両立を目指した町となっている。
何故この様な違いが出ているのだろうか?
この違いは元々の成り立ちによる違いがあると思う。
おはらい町は、お伊勢参りの参拝客で発展した門前町で昔から観光で成り立っていた町。
それに対して河崎は、おはらい町で消費される物資の集散地として発展した問屋町でビジネスの町。
町屋のリノベ―ションは今も進行中。どんな店が出来るのだろうか?
左の店はカレー&シチュー専門店、河崎2丁目食堂。
ここのカレーは長年、洋食の修行を積んだシェフが5日かけて作る逸品とのことで、河崎を訪れる楽しみの一つだったが、昼の営業時間が終わってしまっていた😢
次に伊勢に行ったときは絶対に行ってやると心に誓った。
江戸時代創業の雑貨問屋「魚仙」の本宅。建物は1929年(昭和4年)に造られた。
散歩地図には村田邸と書いてあり、ここはお店ではなく今も住居となっている様である。
あともう一つ河崎の建物で注目ポイントがある。屋根のてっぺんにある鬼瓦。
鬼瓦は屋根のてっぺんや端っこに取り付けられている瓦で、厄除けや装飾のために設置されている。
wikiによるとその起源は古代ローマ帝国まで遡り、シルクロードを経て中国、日本に伝来したとのこと。
切妻屋根が多い伊勢の町屋では鬼瓦が正面に見えるため、デザインを凝らした様々な鬼瓦を見ることが出来る。
この店の鬼瓦はてっぺんだけではなく、よく見ると庇(ひさし)の右端にも付いている。
看板には驚きの情報、名物伊勢海老雑炊が880円とある。めっちゃ安いやん。
伊勢市駅付近には伊勢うどん屋は沢山あるが、どこも早く閉まるので夕食の選択肢がかなり減ってしまう。
この店は結構遅くまでやっている様なので、そこがマジで素晴らしい。
この蔵には鬼瓦が3つも付いている。探してみて。
新しい店だけでなく、江戸時代から続く老舗もある。和菓子屋の播田屋は参拝客への茶店として万延元年に創業。
伊勢となんの関係もないが、万延元年と言えば大江健三郎の「万延元年のフットボール」が枕詞の様に口からでてしまう。ただ読んだことはない。いつもながら不勉強で恥ずかしい。
路地も石畳になっていて、素晴らしい雰囲気。奥へ行くほど下り坂になっていて、路地を抜けると…
川に沿った遊歩道に出る。昔は両岸の遊歩道はなく、建物は川のすぐ真横に立ち並んでいた。
昭和の頃の勢田川の河川改修で、現在の姿になった。
対岸に渡り川沿いにしばらく進むと、昔の雰囲気が残されているところがあった。
古い建物が川べりに連なってて、川面にその姿が映っている。江戸明治の勢田川の雰囲気を感じられる。
しかし近づいてみると、遊歩道が川の真ん中を通っているというなんとも不思議な感じになっていた。
とは言え蔵と川の雰囲気を残してくれているだけでも、ありがたいと思う。
船着き場の石段から本通りを見る。伊勢では家と家の路地を世古というらしい。
昔はここを荷役人や商人が荷物を運び往復していた。
本通りから川の方を見る。
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