伊根浦資料館 おちゃやのかか

先ほど触れた、伊根浦資料館に到着。
ここに来るまでの筆者は、伊根町は江戸明治の町並みが残っていて素晴らしいなぁ~と能天気なものであった。
舟屋の歴史はそんなに薄くはなかった。

1階は地元野菜の直売所と喫茶店になっていて、観光客だらけの舟屋カフェに比べると地元の方の交流センターの様な感じ。
店の方の話によると、昔は近隣からやってきた漁師の作業場兼宿泊施設だったらしい。
これを番屋といって、古い漁師町でたまに見かける。

2階が展示室になっている。ここに真の舟屋の模型が展示されている。その驚愕の姿を目に焼き付けるのだー!

何なんこの舟屋は?古代の舟屋なん?そんな風に思って説明を読むと、これは江戸時代初期の舟屋だった。
これが元々の舟屋の形で、2階部分は梁しかなく、物置と船を収納するためだけの建物であった。この舟屋がなんと昭和初期まで続いていたのだー。
今の舟屋になったのは、その時期に大火事があったことで、形を一新したらしい。
あれ?それやったら、住民はどこに住んでいたんやろ?

実は舟屋の向かい側の家に住んでいたのだ。
一般的には道を挟んだ家と家は、別の家のお向かいさんだが、当時の伊根町では舟屋と向かいの家がワンセットになっていて、向かいの主屋に住んでいた。
舟屋と主屋の間には、今みたいな広い道はなく、狭い路地があっただけで、そこも含めて私有地であった。
今の町並みは昭和初期、海側を埋めたてて舟屋を移動させ、伊根浦を貫く道を通したことで出来上がった。
これは分からんかった。道が無かったって衝撃的やな~。
もう一つ、舟と漁業に関して大きな変化をしているものを見つけた。
伊根漁港

舟屋の町である伊根町にも近代的な漁港が出来ていた。ここに停泊中の漁船は舟屋に入っておらず、海に浮かんだままになっている。
舟屋に入るわけないやろと、伊根の人にツッコまれそうである。それに強化プラスチックによって腐敗しなくなったので、舟屋に入れる必要は無くなっているのだ。
意外な事に、伊根には魚屋さんがなくて、町の人はこの漁港で直接買う「浜売り」で購入しているとのこと。魚屋を介さないので、採れたての魚を安く買うことが出来るのだ。
漁港を見てそんなことを調べていると、魚が食べたくてウズウズしてきた。楽しみにしていた道の駅が丁度、近くにあるので行くことにしよう。
道の駅 舟屋の里伊根

漁港の近くとは言え、山の上にあるので結構な階段を登ってやってきた。
ここの楽しみは食事だけでなく、見晴らしが素晴らしく伊根湾全体を一望が出来るとネット情報にあった。

伊根に来たら絶対に食べたいと思っていたのが、伊根の寒ブリ。この日は3月でギリギリ旬の時期。
伊根は富山県の氷見、長崎県の五島列島に並ぶ、日本三大鰤漁場の一つなのである。
ほぐすのは大変やったけど、脂がのっていてかつ上品な味わいでめっちゃ旨かった。
あと値段以上に、ブリがたっぷりと入っていて量的にも大満足。

道の駅からの伊根湾の景色。湾の入り口の丁度真ん中に島がうまい具合に配置されているのが一目瞭然。
レストラン内からもこの景色が見れるようになっていて、景色も食事も最高過ぎた!

伊根湾では昔からの定置網漁と、昭和後半に始まった養殖が行われている。
定置網漁とは魚の回遊ルートに大型の網を設置して、網に入った魚を捕獲する漁法。
こういう山に囲まれた小さな湾は、波が穏やかで山からの栄養豊富な水が流れ込んでいて、魚が集まり易く、育てるのにも最適な環境なのである。
伊根湾遊覧船

伊根町に到着してすぐに乗った大きな遊覧船もよかったけど。伊根浦から出ている遊覧船にも乗ってみる。
遊覧船は何隻か泊まっており、人が集まったら出港するって感じになっている。
何となくこの船の船長さんに声をかけると、もう出港する様なので乗ることにした。
船名のセンスが好きやわ。ゼロから始める伊根生活みたいな(笑)。

この距離まで近づいてくれるので、海からの舟屋の景色を存分に楽しめた。
若い船長さんの解説も調子がよくて、めっちゃ分かりやすかった。

伊根浦に着いて、最初に訪れた向井酒造株式会社。蔵の前にはおられるのは従業員の方々。さっきまでお互いに手を振り合っていた。
船長さんの解説によると、ここの杜氏さんはなんと京都初の女性の杜氏さん。伊根満開を開発したのもその方。
遊覧船から、蔵元の方々と交流が出来るなんて、まごうことなき「日本で一番、海に近い酒蔵」であった。

2階部分が一切無い舟屋があった。帆船でも入れるのだろうか?
船長さんによると、伊根町では海の祇園祭と呼ばれる伊根祭が毎年7月にあるらしく、その時に海上を巡る神輿船がここに収納されるらしいのだ。
伊根祭は京都の八坂神社の祇園牛頭天王社を勧請したことが始まりらしい。と言うことで、伊根にも八坂神社があるみたいなので行ってみる。
八坂神社に参拝して、伊根の旅を締めくくり、京都へ戻ろうと思う。
八阪神社

海から一直線に続く細い道が、八阪神社の参道。
今、車やバスが通っている伊根のメインストリートは、昭和に新しく整備された道だが、この参道は昔から変わっていない。

船での移動が基本の昔の伊根では、神社やお寺に参拝するのも船だったので、海からの一直線の参道が作られていたのだ。
他にも、この様な海から真っすぐに続く道が何本か見つけた。

伊根の八阪神社は「坂」が「阪」になっている。どういう違いがあるのかはよく分からない。
大阪も昔は「大阪」と「大坂」の二通りの表記をしていた。ただの表記の揺れだけのことかも。

市内の八坂神社と比べるとちょっと物寂しい雰囲気の境内。
牛頭天王に挨拶し、京都市内へ帰洛することを伝えた。

下りの参道からは、日が暮れつつある伊根の町と海を見ることが出来た。
近くのバス停から宮津に戻る。名残惜しいけど、向井酒造で買った酒を電車で飲むのが、今から楽しみ。もちろん、つまみも購入済み(笑)
伊根 Googleマップ
伊根へのアクセス
公共交通機関🚃🚌
京都丹後鉄道、宮津駅下車。丹後海陸交通路線バスで約65分。
車🚗
京都縦貫自動車道「与謝天橋立IC」から約30分
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