茅原山 吉祥草寺

茅原山吉祥草寺は、圓照寺から歩いて10分ほど。
御所が生み出した日本最初のアルピニスト、修験道の開祖である役行者(えんのぎょうじゃ)の誕生地。
役行者、本名「役小角(えんのおづぬ)」は、以前に紹介した高鴨神社の賀茂氏の一族。


役小角が16歳の頃、日本に伝わり始めていた仏教にハマり、葛城山や吉野山で山岳修行を始めた。深山幽谷の地での厳しい修行の末、仏教と古神道と融合したといわれる修験道を確立した。
回復術や舞空術、敵の行動を封じたりするという神秘的な力を得たと言われている。賀茂一族は陰陽師の賀茂忠行(安倍晴明の師匠)も出ていて、中二病心をくすぐる一族なのだ。
また、大の登山好きで、日本全国の有名な山を登っている。ジョージマロリーが知ったら、国や時代を越えて共感するに違いない。

吉祥草寺の創建は役小角自身。
当時、首都であった飛鳥から近い御所まちには、最新の知識や技術が伝わってきた。
海外の最新知識であった仏教は、若い役小角を魅了したのだろう。

吉祥草寺で最も歴史のある祭りが、1300年前から行われている左義長(トンド)。毎年1月14日、本堂の前に置かれた2つの巨大な松明に法灯が点火され、五穀豊穣などを祝う。
あと「御所まち霜月祭」も吉祥草寺の祭り。毎年11月第2日曜日に行われ、山伏が町を練り歩いたり、縁日や並んだりする。こっちの方がお祭りって感じ。町屋の公開もされるので、これはマジで見に行きたい。
ところでこの寺、面白い試みをしていて、役小角の中二病だけでは飽き足らず、萌えを加えようとしていた。意味が分からないと思うので、本堂の中へ入ってみよう。

荘厳な雰囲気の堂内に場違いと思えるこの人物は、役小角奈(えんのおづな)。役小角の子孫で吉祥草寺の御本尊である。
そんなバカな!なんでこんなアニメキャラみたいなのが、御本尊になってるんやー。
これは決しておふざけではなく、実際に修験道の本山の一つ京都の聖護院から山伏を招いて、小角奈に入魂の儀を行っており、正真正銘の神様なのである。
萌えキャラが御本尊になったのは世界初のことで、檀家が少ない吉祥草寺が、参拝客を増やすための試みらしい。
興味深いのが、修験道の聖地となっている奈良県南部に広がる大峰山は、今も女人禁制になっているのに、萌えキャラ少女の御本尊はOKになっている。信者からも特に異論がないらしい。

境内には熊野神社が、吉祥草寺の守護神として祀られている。
拝殿と社殿が別になっていて、通り抜けが出来るようになっている。この様式を割拝殿というらしい。
あまり見かけない珍しい様式。記憶にあるのでは伏見の御香宮神社くらい。

拝殿を通り抜けた奥にある社殿。総本社である熊野本宮大社は、世界遺産にもなっている修験道の聖地。
前に訪れたことがあって、紀伊山地の奥深いところで、深山幽谷の地という感じがした。特に熊野那智大社の方は、那智の滝や三重塔があって、中国の仙人が出来そうな雰囲気だった。
旅の最後には、西御所まちで見つけた風情のある銭湯に行って、旅の締めくくりとした。
御所宝湯

1916年(大正5年)に創業した歴史ある銭湯。ただ悲しいことに2008年に廃業してしまった。
しかし、御所に残る伝統建築物を活かした町づくりの話が持ち上がり、2022年10月に復活を果たした。
建物の改装はされているが、基本的には当時のままらしい。大正時代の雰囲気が味わえる銭湯があるって、御所の魅力は環濠だけではなかった。

入口扉を開けて、番台があるエリア。昭和の銭湯と違って、木造建築の温かみが感じられる造り。

番台エリア奥には、普通の銭湯にはあまり見かけない休憩スペースがあった。その前には、風呂上がりの誘惑が並べられている。
風呂だけ入って、さっと帰るだけなってしまう普通の銭湯と違って、スーパー銭湯みたいに、長居したくなる。
実際、ちょっと油断して電車を一本逃してしまった(笑)。
引用元:ごせのね
脱衣所はもちろん写真撮影不可。しかしどうしても紹介したく、御所市役所のホームページからお借りした。
驚いたことに天井のデザインが、正方形の格子が並べた格天井になっているのだ。
格天井は和室の天井で最も格式が高い天井で、大名御殿や有名寺院などで見たことがあったが、銭湯で見たのは初めて。マジで凄いわ…。
御所まちはその名の通り、品の良さを感じられる町であった。
長文でしたが最後までお読みいただきありがとうございました。

東御所まち Googleマップ
東御所まちへのアクセス
近鉄御所線またはJR和歌山線 御所駅下車 徒歩15分
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