常滑歴史散歩 招き猫が導く路地が入り組む陶芸の町

土管坂

土管坂

これでもかというほど、常滑焼の赤褐色で染まっている道がありました。左側は土管ですが、右側に埋め込まれているモノは何でしょうか?

これらは焼酎瓶で、常滑では焼酎瓶も大量生産しており、土管と同じ理由で壁に埋め込まれています。

更に地面にも陶器っぽいモノが埋め込まれています。これは陶器を焼くときに出た廃材で、「ケサワ」と言います。常滑は坂道が多く滑りやすかったため、道に埋め込んで滑り止めとして再利用しています。

このスポットは常滑三大再利用が全部そろった場所で、土管坂と名付けられています

土管生産は明治になってからで、土管の常滑といわれたほどの生産量でした。重い土管を全国に運ぶのにも、港が近い常滑の利点が発揮されました。

土管坂

上から見た土管坂です。地面の模様は色んなパターンがあり、単なる滑り止めではなくアート的な面白さがあります。

陶芸には芸術的な要素があるせいか、町の雰囲気にもセンスの良さを感じさせます。

既にお気づきの方も多いかもしれませんが、先ほどから黒一色の建物が多いと思いませんか。壁に黒漆喰やコールタールを用いて、意図的に黒くしています。これにも陶芸の町ならではの理由があります

一つは黒く塗ることで、煙やススの汚れを目立たなくさせています。
もう一つは、こちらの方が重要ですが、黒漆喰やコールタールには防火性を高める効果があるので、火事を防ぐためでした。

黒い建物だらけなので、外見からでは民家なのかお店なのか分かりづらいです。でもそれがこの町の面白さ。

看板が出ているのでここも陶芸工房に違いないが、それでも入っていいのかと迷うお客さんを見かけた。筆者が来た時は、店内に先客がいたので安心して入店出来た。

干支の焼き物

道沿いに常滑焼で造られた干支の置物が並べてありました。

左から虎、馬、猪、鶏、羊、猿、鼠、蛇でしょうか。ここは干支の集まりなので、招き猫はいません。鼠に騙されたに違いありません。

登窯広場

登窯広場展示工房館

やきもの散歩道のちょうど折り返し地点には、休憩にも利用できる登窯広場展示工房館があります。

ここでは絵付け体験・陶芸体験が出来たり、常滑焼に関する様々な展示がされています。

一番の見どころが、少し進んだところにある超巨大登窯です。この登窯が、常滑が焼き物の町として栄えた3つ目の理由です

登窯広場展示工房館 公式ホームページへ

広場を出たところにある陶芸ショップの道の先にある黒い建物が登り窯です。ここからでは、まだその全容をつかめない。

登窯

登窯はかなりの高さがあり、奥の方まで続いています。上の部分は黒板壁、下の部分は土管壁になっています。並べられているのは陶磁器を焼くときに使う匣鉢(こうばち)。

登り窯

反対側から見ると、その異様な姿の全体像を捉えることが出来た。巨大生物の様な黒く平べったい建築物が斜面上を這うように横たわっている。

中には入れませんが、空いている箇所から内部をのぞくことが出来ます。

登り窯

レンガ造りの窯が階段状に先が見えないくらい奥まで続いている。

全部で8つも部屋があるので大量に焼くことが可能となっています。この登窯が取り入れられたことで、陶磁器の大量生産が可能になりました。

登り窯

先ほどの説明書きを見ながら、窯の仕組み簡単に説明しましょう

火を焚くと熱くなった空気は軽いので上にいきます。炎は火力を増すために外部の冷たい酸素を取り込みます。この現象をドラフト効果といい、室内に高さがあるほど効果が高まります。そのために上部に煙突を設けます。煙突には煙を逃がすためだけでなく、こういった効果もあります。
しかし、単純に上に煙突があるだけだと、熱がすぐに外に逃げてしまいます。そこで窯を斜面上の長いトンネルの様にし、煙突を一番奥に設けることで、より強いドラフト効果が得られ、熱い空気がダイレクトに陶磁器に触れながら上に移動する流れを作り出すことが出来ます。

登り窯は朝鮮半島か伝わったと言われ、日本では江戸時代に普及しました。それまでは穴窯と呼ばれる、焼成室が一つしかない窯でした。大量に焼くために焼成室を広くすると、温度調節が難しくなり焼きムラが出来てしまうので、大量生産が不可能でした。

この問題を解決したのが登窯です。焼成室が小分けにしてあるため、各焼成室で温度や炎の調節が出来、ある程度まで部屋数を増やすことが出来るので、大量生産が可能となりました。
また、下の焼成室では温度が高く、上の焼成室では温度が低いと差があるので、多彩な焼き上がりが生み出されました。

登り窯 焚口

登り窯の一番下の部分です。ここが焚口で焼成のスタート地点です。ここから火を入れて薪などの燃料をくべます。

一の焼成室が目標温度に達したら、各焼成室に設けられた小口から薪をいれて、温度調節をしていきます。窯全体が目標とする温度、1000℃~1300℃に達するには丸1日かかるらしいです。

登り窯

側面を見ると、薪を入れる小さな窓と、陶磁器を入れる大きな入口があります。これが各焼成室に設けられています。

登り窯はその構造上、斜面に造られます。常滑は小高い丘に広がった町なので、斜面には事欠きません。このことが常滑が陶芸の町として発展した3つ目の理由です

登り窯 煙突

登り窯の上の方まで登ってきました。上の部分には10本もの煙突が並んでいます。

真ん中の数本は同じ高さで、端に行くにつれて高くなっています。こうすると、釜の隅まで均一に焼けるようになるらしいです

窯をみると、陶芸が炎の芸術といわれているのが、分かった気がしました。

常滑焼

窯のことを知ると、陶芸を見る目も少し変わった気がします。

こんなに可愛い招き猫も、1000℃以上の高温に焼かれて生まれてきたと思うと、頭が下がります。

次はちょっと箸休めということで、近くの神社に行ってみました。

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この記事を書いた人

著者;どらきち。平安京在住の地理、歴史マニア。 畿内、及びその近辺が主な活動範囲。たまに遠出もする。ブラタモリや司馬遼太郎の「街道をゆく」みたいな旅ブログを目指して奮闘中。

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